抵抗

抵抗された方が燃える、と聞く。恥じらって隠してるのとかかわいい、みたいな。

嫌がっている人間を無理矢理どうにかする行為には賛同できない。私なりにこの言葉は、自分に向いた相手の行動に何らかのリアクションを取ることは大切だ くらいの意味で捉えている。
反応を返すことで、自分が相手に何かされている当事者だと、これはふたりの行為だと確認しあうことができる。本気で嫌なわけではないけれど形ばかり抵抗してみせることが、これは自分にとって守るべき一線なのだと、価値があるものなのだと示すことになる。


好きな人は、私に組み敷かれてまったくの無抵抗だった。
触られても噛まれても服をめくられても、ふーん? どうぞ? って綺麗な顔で目だけでこちらを見ていた。
私が物理的に、あるいは性的に彼をどうにかしようとしたところで、心まで奪うことはできない。身体や貞操や命は彼にとってさして重要なものではない。彼が大切にしているものはここにはなくて、私には触れることができない。

今ここでどうしようとあなたに私は奪えないという高潔な意思表示、その裏返しの無関心。あまりに当事者意識がない。コミュニケーションをとることに失敗して、どうにも手が出せなくなってしまう。

首に手を掛けられても、穏やかに静かに目を閉じていた。私は怖くなって手を離してしまった。私に彼は殺せなかった。殺せるはずがない。私の前で彼は、生きてなどいなかったから。