よかったこと

性について、周りが極端なのでふつうがわからないところがある。

家庭(とくに母親)はえっちなことなんてとんでもない! アニメもマンガもいけません。そのうち保健の授業で習うから。恥ずかしいことです。といった感じだった。
あとは「チューするとき鼻ってどうするの?」「目が合ったしセックスだった」みたいな童貞と、水曜日くらいに「今週まだ処女だな」などと言い出す性豪ばかり周囲にいる。極端である。

私はしょうもない下ネタは大丈夫で、えっちなことを考えて発信することもあるが、生々しい話になるとあわあわしてしまう。


会社の昼休みは隣の部署の女子同期と過ごしている。どえらい美人のお兄ちゃんっ子である。入社当初は当たり障りのないやさしい話をしていたが、半年も経つと様々な話題が挙がるようになる。
その中で、好きな人の話をした回があった。食後の散歩の時間を3日分くらい使って、続きはまた明日、と。

「会えたの!? すごいじゃん」
「うん」
「部屋に行って、何もなかったの?」
「何もないこともなかったよ…」

めいっぱい苦そうな顔を作って言った。まあ中学生でもないし、何かあったっていいだろう…と。

「あったんだね! やったね、よかったねえ…」
触れられずに流されるだろうと思ったのに、彼女の反応は明るいものだった。心底安心したように、祝うようにやさしい言葉を重ねた。


彼女のことは純粋で天然で矩を踰えないまじめな人だと思っていた。少なくとも貞操観念のぶっ壊れた友人らのようには見えなかった。私の周りの数少ない「ふつう」っぽいひとだった。

よかったこと でいいんだ。
好きな人と何かあるのは よかったこと でいいんだ。後ろめたいことではないのだ。目から鱗が落ちる思いだった。

うん、ありがとうね、よかったよ…と、やっと思い出を労うことができた。



彼女(影響されやすい)は わたしも好きだった先輩に会いたくなった!! とひとに連絡を取り始め、この連休に約束を取り付けたらしい。

いてもたってもいられない気持ちで週明けを待っている。彼女は私にとってとても大きな存在なのだ。