「婚活に向けて脱毛サロンに通い始める人も多いですよね♪」
そんな文面で、さらっと書いてあったと思う。美容院の待ち時間で同世代の女性向けファッション誌を読んでいたときのことである。
いやいやいや、と心の中で突っ込んでしまった。少なくとも自分の周りにそんな人はいない、恋人がいるからでも綺麗に夏を過ごすためでもなく婚活に向けて…？ まだ見ぬ異性のために？ そんなことある……？
そんなことあるだろうな、と今では思っている。
美容院で雑誌を見たのが夏の初めで、この夏にべつだん何があったわけでもなかった。ただ袖の短い服のため体毛を処理するたびに、婚活に向けて脱毛サロンに通うイマジナリー女性のことを考えた。
人生にはいつか、今までの答え合わせの日が来るのだ。
素敵な人に出会って、何らかのイベントがあって、すべては今日この日のためだったんだ、と思う日が来るのだ。この人に出会う前から何年も何万円もかけて脱毛サロンに通ってよかった、と思うのだ。
そんなことある？ とか心の中で突っ込んでいるような私は、いつかの答え合わせの日に相応の思いをするのだろう。
いつくるのか、本当にくるのかどうかもわからない日のために毎日努力できる人のことを心底尊敬している。まあ図書館とスーパーに行くだけだし、この街で好きな人に会うこともない、と雑な格好で出かけてしまうことがある。稀に知り合いに会ってちょっと恥ずかしいこともあるが、その低確率の恥ずかしさと毎回綺麗な格好で出掛ける手間を考えたら、雑な格好で出かけるほうがはるかにコスパがいい と思ってしまう。
或る人に再び会える可能性が出てきた。髪の長い女性を好きな人である。
いつかまた会えたら、夢でもいいから、と思いつつもう永遠に会えないことがわかりきっていたので、彼のことを考えつつも日ごろの簡便さのために一昨年髪を切ってしまったのだった。こういうところだよな、と思う。
