どうでもよくなってあげたかった

「けっこう時間が経ったのにまだ失恋を引きずっていまして…」

という相談に うんうんわかります、ぼくも高校のころの人とか引きずってますよー! って言おうと思ったらつい3ヵ月くらい前の破局の件だったそうなので何も言わなかったことがある。

 

引っ越して会社勤めが始まって新しい出会いなどもあり、これは好意を以て近付かれているな…と自分でも感じるような人間関係が数件あった。それどころではなかったので雑な対応をしたり放置したりしていた結果、ほとんどの人がもう何も言ってこなくなった。

すごいな、と思った。執着されたり追いかけられたかったりしたかったわけではない。脈がないと判断したらすぐ気持ちを切り替えて次に行くというこころもちが、自分にはまったく備わっていないものだったのだ。わざわざ電車の時間をぼくに合わせて連絡先を交換して「これから毎日メールしますね たくさん日本のこと教えてください」とか言ってきた海外出身の同期などもおり、これは長い目で見てめんどうなことになったぞ! などと思っていたのに、配属拠点の異動もあり2か月ほどでやりとりが終わった件もある。

 

私も好きな人のことをどうでもよくなってあげたかった。

何年もかけて脈のなさを提示され続けてそれでも毎日毎日メールしたり席替えで泣いたりしている場合じゃなかった。何されてもずっと好き! とか言ってる場合じゃなかった。マイナスの感情でもいいから心に残りたい、普通で終わりたくない、とか思っている場合じゃなかった。自分の恋のためでない、平穏な生活を贈ってあげるべきだった。

付き合って破局したわけでもない気持ちの終えどころが、わからなかったのだ。手に入らない好きなひと をその座からどかすことができなかったのだ。22歳になってやっと彼らから学んだことが当時できれば、残りの時間で多少は円滑な関係があったかもしれい。

 

数件の人々とはふつうに接することができて、集まりが終わって解散するときに個別で呼び止められるようなこともなくて、みんなが私のようでなくてよかった、と思う。