足場

パートナーは光属性の聖人である。

肌荒れちゃうからムダ毛処理しなくてもいいよ、ねぐせついててもかわいいね、ダサいパンツでもだいじょうぶだよ、いつも気を遣うの疲れちゃうもんね、脱いじゃえばおなじだよ…

曰く、いつもしっかりしているお姉さんが自分の前で肩の力を抜いたり甘えたりするのを見るのが至上の喜びなのだそうだ。

彼の部屋で私は自分の家にいる以上にくつろぎ、安心して眠ることができる。平日会社で社交モードになっている揺り返しに、世間体を人の形を捨てて練り物になれる。

 

好きな人が心から去ろうとしている。懇意にしていた先輩や友人とも関係を断って久しい。負け戦でも火遊びでも下手な鉄砲でもない、安定した愛の出力と供給が原動力になっている。

 

もう、洗濯のローテーションや無駄毛の処理や美容院の予約のタイミングをその日のずっとずっと前から考えて考えて、思い出のための服を買って、布団の間で息をひそめてメールの返信を待つような夜はとうぶん無いのだろう、彼の愛に甘んじてクソデカラブに身を委ねている限り、このまま結婚でもしたら一生無いのだろう。

飽きることも薄っぺらい冒険心を燃やすこともなく、チョウチンアンコウのオスの末路のようにしあわせにいられるだろうか。私は。